R7年度決算審査

9月18日で9月の議会が終わりました。毎年この議会では前の年度の決算審査をします。

令和7年度の一般会計決算額は、歳入が148億8,127万1千円で前年度に比べると9億7,462万9千円(7.0%)の増加となりました。また、歳出は140億7,913万3千円で、前年度に比べると7億6,067万3千円(5.7%)の増加となりました。

歳入が増えた理由

歳入148億8,127万円(前年度比+7.0%、+9億7,463万円)の中身を見ると、一番大きいのは市の貯金(基金)からの取り崩しで、増加分の4割強を占めています。ただし、その大半はふるさと納税を財源とする基金や観光振興のための基金など、もともと使う目的が決まっているお金の取り崩しなので、これ自体は特に悪いことではありません。

次に大きいのが、全国一斉のシステム更新にともなう国の補助金(諸収入、+1億7,589万円)、そして県からの補助金(+1億5,714万円)です。県からの補助金は、災害復旧や漁港整備、福祉、学校のICT環境整備など、それぞれ別の事業に対するもので、特定の1つの理由でまとまって増えたわけではありません。

地方交付税(+1億5,068万円)と市税(+1億3,667万円)もそれぞれ増加しました。市税は、観光客の回復による法人・個人市民税の伸びや、太陽光発電設備の新設による固定資産税の増加が主な要因です。

一方で、国からの補助金(国庫支出金)はむしろ減っています(▲1億933万円)。物価高騰対策として支給されていた国の交付金が縮小したことが理由です。

歳出が増えた理由

歳出140億7,913万円(前年度比+5.7%、+7億6,067万円)の増加は、大きく2つに分けられます。1つは人件費(+2億8,999万円)。人事院勧告にもとづく給与改定や、地域手当という新しい手当の導入、退職者数の増加によるものです。もう1つは物件費(+4億9,586万円)。この年は衆議院議員選挙・三重県知事選挙・鳥羽市長選挙という3つの選挙が重なったこと、全国一斉のシステム標準化への対応、小中学校のICT端末の更新などが主な理由です。つまり、毎年恒常的にかかる費用というより、この年ならではの重なりが大きい、ということになります。

決算の審査は、予算決算常任委員会で行われます。鳥羽市議会では議長以外のすべての議員がこの委員会に所属しており(議長は発言が制限され、票決にも参加しませんが、同席はしています)、ここで各担当課にそれぞれの事業についての説明を受け、審査をします。

各事業のことについては、鳥羽市歳入歳出決算成果説明書を見ていただくとわかりやすいと思います。各事業について掲載されているページ番号を示します。

健康福祉課の苦しさ

今回特に印象に残ったのは、健康福祉課の「総括」P.125に書かれていた職員の業務負担への悲痛な思いです。健康福祉課の業務はいつどのような重症度で市民から助けを求められるかが予測できず、急に入った案件で何時間も拘束され、事務作業をする時間がなくなってしまうことがしばしばあります。しかし、事務の締切は容赦無く迫ってくるため、残業をすることになってしまいます。R7年度は途中退職や休職もあり、特に中堅職員の負担が著しく増えたと言います。そのような事情から「(前略)行政の持続可能性という視点で市民の皆さんの理解を得ながら、敢えて事業を絞っていくことが必要なステージに来ているようにも感じているところです。」という一文がありました。課長の言葉を借りると、健康福祉課の事業は生活に密着しているので、1つの事業をやめると必ず困る人がいます。それでも事業を絞る、という選択肢が出てくるほど職員が疲弊しているという状況は看過できません。

「この事業をやめたら?」という審査をすべきだったのだろうか、という考えが拭えません。

地域力強化を推進

そんな健康福祉課の事業で注目が集まったのは、地域力強化を推進する事業です。 P.137

「まちのカルテ」はご存知ですか?社会福祉協議会が、まちの人たちと懇談する「まちトーク」を開催し、その地域が抱えている課題を把握し、まちの情報や課題を落とし込んだ冊子です。鳥羽市内のすべての自治会のものがありますが、R7年度は5つの自治会でまちトークが開催され、まちのカルテが更新されました。また、まちトークで話し合われた課題等については、その解決に向けて支援をする「地域力アップ応援金」という制度があります。例えば大明東町では「住人同士の交流が少ない」「担い手不足」「子どもや若者が少ない」などの課題に対して、「子どもたち」に焦点を当てて、夏祭りにおいて子ども達が「子ども屋台」を運営することを支援しました。地域力アップ応援金は4つの自治会で利用されました。(うち1件は前年度にまちトークをした自治会)

まちトーク自体が、地域の人たちが自分たちの住む地域を改めて捉え直したり、課題の整理に役立ったりしています。さらにそこでわかった課題解決に対して支援を行うという、一貫した流れを作る地域力アップ応援金自体も良い事業だと思います。一方、地域力アップ応援金の上限が20万円であるため、その範囲で解決できない課題が多くあるのではないか、という指摘もありました。

父親の育児参加

ちょっと嬉しかったのは、子育て支援室のとばっ子ハッピーセミナー事業P.158~で、男性(父親)の参加がR5,6年度は9〜10名だったのが、R7年度は19名だったとのことです。

おてつたび

ふるさと鳥羽関係人口創出事業P.56は、昨年私が最初に出た予算決算常任委員会で、補正予算の審査をしました。「おてつたび」はお手伝いと旅を融合させた就労マッチングサービスで、短期間のアルバイトの合間に観光ができるようになっていて、人手不足で悩む事業者(特に旅館など)が多くなおかつ観光地である鳥羽にはぴったりのサービスです。おてつたびを利用する事業者に対して5万円の補助金を出すという事業で、目標は20事業者でしたが、実績は13事業者にとどまりました。担当課は理由としてスタートしたのが10月だったため、夏休みに間に合わなかったことを挙げています。今年度も継続している事業なので、どうなるか期待して見ていきます。

国際的な観光文化都市と英検

教育委員会の事業P.282では英検の合格率について、多くの意見が出ました。第3次鳥羽市教育ビジョンには「国際的な観光文化都市である鳥羽において、子どもたちの英語への親しみや興味・関心を引き出すと ともに、積極的に英語を活用してコミュニケーションを図る力を育てる必要があります。」とあり、実際に小学校では台湾の小学校とオンラインで交流を行ったり、クルーズ船入港時に海外からのお客さんに鳥羽の紹介をしたりする取り組みがされています。中学校では姉妹都市のサンタバーバラ市やパラオへの派遣などもあります。そんな中で児童・生徒が実際に英語で話す楽しさを知り、英語はコミュニケーションのツールとして使うものなんだ、という意識が強まっている中で、英検の合格率を指標とすることへ私は疑問を感じます。また、合格率が前の年度よりも下がっていることについての指摘があると、「中学生自体の数が少ないので、パーセンテージで出すとブレが出やすい」との趣旨の答弁がされました。ブレが出やすい物で事業効果を測ることへもその妥当性を疑問視する声が上がりました。また、英検受験の公費負担について、最初の頃と比べてありがたみが感じられなくなっているのでは?という体感を語る人もいました。 予算を使って事業を行う以上、なんらかの方法でその効果を測定する必要がありますが、その方法というのもよりよりものが模索される必要がありそうです。

終わりに

決算審査のための予算決算常任委員会は4日間にわたって開かれた(1日目2日目は夜7時までかかりました)ので、ほんの一部しか紹介できていませんが、少しでもその様子が伝われば幸いです。

9月18日の本会議終了後に、正副議長と予算決算常任委員会の正副委員長から令和9年度予算編成に対する提言書が市長へ手交されました。各課における既存事業の見直しと業務の効率化と組織改編に合わせた定数管理の見直しと適正配置を求めました。全文データはこちらです。

以下に委員会で論点、争点となり、委員間討議で合意した主な諸点として委員長が報告した内容を箇条書きで載せておきます。

企画財政課/DX推進事業P.47:令和7年度に26件の業務改善を実施。今後のDX推進に期待。市民サービス向上という目的を見失わず、DXはあくまで手段であることを念頭に、強化・推進を図ってほしい。
税務課P.91:収納率の向上、利用者の利便性向上、職員の作業負担軽減を実現。常に業務改善を意識した新たな取り組みを評価。
健康福祉課/地域共生社会推進事業P.137:まちトークの開催や応援金の活用を通じ、課題を明確化し居場所づくり等につなげている地区もある。地域によっては合意形成に時間を要することもあるが、多様化する地域課題解決に向け取り組みを継続してほしい。
健康福祉課/一次及び二次医療対策事業P.182:「とば健康・医療ダイヤル24」の開設により、緊急時でも医療にアクセスできる体制を新たに構築したことは非常に価値がある
環境課/堅神火葬場リフォーム事業P.187:現施設を取り巻く課題や将来需要等を整理しているところだが、移転を含めた火葬場のあり方をさらに検討してほしい。
観光商工課/多様な旅行者の受入推進事業P.227~:フランス・シンガポールでの海外プロモーション、日仏海洋学シンポジウムの開催など、「海洋都市・鳥羽」の価値を活かしたインバウンド・ブランド化の取り組みは質が高く、継続・強化してほしい。
観光商工課/離島の魅力創出事業P.235~:神島を舞台とした人気ゲームとのコラボ事業。3年かけて慎重に準備・熟成させ、若年層の聖地巡礼・周遊という経済効果につなげた点を、行政のチャレンジとして評価。
消防本部/防火対象物立入検査業務・危険物施設等検査業務P.265:立入検査後の改修・是正指導をさらに徹底し、安全・安心の確保に努めてほしい。
教育委員会学校教育課/外国語教育推進事業P.282:英検などの指標・目標設定が手段化している懸念がある。本来の目的であるコミュニケーション能力・国際理解の向上に向け、検証・評価方法を再検討してほしい。