なぜ私は、議案第64号に反対したのか

今回の議会で、私はある議案に反対しました。
この判断について、結論だけでなく、考えた過程もお伝えしたいと思い、文章にしています。

議会での判断は、賛成か反対かの二択のように見えて、実際には迷いや葛藤を含んでいます。
その中で、私はどんな点に立ち止まり、なぜこの結論に至ったのか。

この文章は、私の判断が正しかったと主張するためのものではありません。
読んでくださった方が、考える材料のひとつとして受け取ってもらえたらと思います。

令和7年11月26日〜12月22日に行われた鳥羽市議会の議員別表決結果一覧。議案番号40から66までの各議案について、賛成は青丸、反対は赤×、欠席または棄権は横線で示されている。議案第64号「鳥羽市分課組織条例の一部改正について」では、一部議員が反対していることが分かる表。

議案第64号は何を決めるものだったのか

今回の議案は、
議案第64号 鳥羽市分課組織条例の一部改正について
というものです。

市役所の組織を改編する内容で、主に次の点が説明されました。

① 企画財政課を「地方創生課」と「財政課」に分け、機能の明確化と強化を図ること
② 新たに「政策秘書課」を新設し、市長部局の政策調整と秘書機能を一体的に運営すること
③ 企画財政課の再編に伴い、総務課についても機能を整理し、より効率的な業務遂行を可能とすること

組織の再編は市長の公約でもあり、市長自身は
「より早く、より強く、より確実に鳥羽市政を進めるため」
のものだと説明していました。

つまり、市役所の中の「役割分担」を見直し、意思決定や調整をよりスムーズにすることを目的とした組織改編です。

行政常任委員会とは何をする場か

議案は、本会議で採決される前に、所管する常任委員会で審査されます。
行政常任委員会は、議案の内容をより詳しく確認し、必要に応じて質疑や議員間討論を行う場です。

委員会では、議案への賛否を多数決で決定し、
その結果は、委員会としての意見として本会議で報告されます。
本会議では原則として、その判断に従うことが求められますが、絶対ではありません。

委員会での議論や本会議での討論を踏まえ、
本会議で最終的な判断を変えることも、制度上は認められています。

委員会は、形式的な通過点ではなく、立ち止まって考えるための重要なプロセスだと、私は考えています。

行政常任委員会では「賛成」にまわりました

行政常任委員会では、私はこの議案に賛成しました。
理由は、委員会の場で一言も発言しなかったからです。

私は、発言をしていないにもかかわらず、少数派として反対にまわることはすべきではないと考えています。
議論に参加しないまま意思表示だけをすることは、議会の責任ある態度とは言えないと思っているからです。

その時点では、反対とまでは言えないものの、
このまま結論を出してよいのか、立ち止まる必要があるのではないか、という違和感はありました。
しかし、その違和感を具体的な提案として言葉にできないまま、議員間討論が終結してしまいました。

結果として、委員会では賛成にまわる判断をしました。

委員会で何が起きていたのか

委員会でも、また議場の外での雑談の中でも、多くの議員が共通して抱いていた懸念は、
現状、休職者や離職者が多い中で、今回の組織改編が職員にさらなる負担をもたらすのではないか
という点でした。

そうした中で、議員の一人からは
「もう少し調査をしたい」
という趣旨の発言がありました。

実際、本来であればこの議案は、通常の議会日程に合わせて11月26日に上程されているはずのものでした。
しかし、今回は臨時の議会で上程されたため、審査のスケジュールがタイトになっていました。

また、この議案について職員間で話し合われた政策会議の会議録について、
情報開示を請求していた議員もいましたが、
「会議録の作成が間に合わなかった」という理由で、この日までに開示されていなかった、という情報もありました。

一方で、
「政策会議でも話し合われたというプロセスを尊重すべき」
「組織改編は市長の職権である」
「今、変えなければまちづくりが停滞する」
といった理由から、賛成の立場を明確にする発言をする議員も複数いました。

こうした流れを受けて、議長から
「委員長報告で、職員への負担増という懸念事項について説明すればよいのではないか」
というまとめが示され、議論はそこで終結しました。

結果として、立ち止まって検討を深める方向ではなく、
賛成で先に進む形で、委員会の判断がまとまりました。

なぜその場で発言できなかったのか

委員会での議論を聞きながら、
私は「このまま結論を出してよいのだろうか」という違和感を持っていました。
ただ、その時点で、何をどう提案すべきかを判断しきれていなかったのが正直なところです。

反対するほどの決定的な問題点があるのか。
条件を付けて進めるべきなのか。
それとも、もう少し時間をかけて検討すべきなのか。

考えるべき選択肢はいくつかありましたが、
そのいずれについても、委員会の場で責任をもって提案できるほど、整理ができていませんでした。

結果として、議員間討論が終結する中で、
私は発言のタイミングを逸してしまいました。

今振り返れば、
たとえ結論を出しきれていなかったとしても、
「立ち止まる必要があるのではないか」という問題提起は、
その場でするべきだったと感じています。

本来なら、私が提案すべきだったこと

今振り返ると、委員会の場で私が提案すべきだったのは、
継続審議という選択肢だったと思います。

理由は大きく三つあります。

一つ目は、時間的な余裕があったことです。
この議案は、年明けに予定されている1月19日の臨時議会に先送りしたとしても、
組織改編およびそれに伴う人事には間に合う状況でした。

二つ目は、もし「時間がない」という状況であったとすれば、
それは議案の上程が遅くなった執行部側の問題であり、
そのことを理由に、十分な審査を省略すべきではないと考えたからです。

三つ目は、判断に必要な情報が十分にそろっていなかったことです。
議案について職員間で話し合われた政策会議の会議録は、
委員会の時点では開示されていませんでした。

こうした状況を踏まえれば、
結論を先送りし、情報をそろえた上で改めて判断するという選択は、
決して無責任なものではなかったはずです。

それでも本会議では反対した理由

委員会での審査を経たあとも、
私の中でいくつかの懸念は解消されないままでした。

そうした中で、本会議の反対討論に立った濱口議員の発言に、強く共感しました。
とくに、

「議会は、市長の提案を形式的に承認する機関ではない」

という趣旨の言葉は、
私がこの議案について感じていた違和感を、はっきりと言語化してくれたものだと感じています。

市長の提案であること。
公約に基づくものであること。
それ自体を否定するものではありません。

それでもなお、
議会には「立ち止まり、問い直す役割」がある。
その役割を果たさないまま賛成することは、
私自身の議員としての姿勢と一致しませんでした。

委員会で十分に問題提起ができなかったからこそ、
本会議では、自分の判断を明確に示す必要がある。
そう考え、私はこの議案に反対しました。

賛成した立場への理解も含めて

この議案に賛成した議員や、提案した執行部の考えについて、
理解できる点がなかったわけではありません。

市長の公約に基づく組織改編であること。
意思決定や政策調整をよりスムーズにし、
市政を前に進めたいという問題意識自体は、共有できる部分も多くあります。

また、組織改編は最終的には市長の権限であり、
市政を進めるためには、一定の決断が必要な場面があることも事実です。

それでもなお、
今回の進め方や判断のタイミングについては、
議会としてもう一段立ち止まる余地があったのではないか、という思いが拭えませんでした。

賛成した立場を否定したいわけではありません。
ただ、同じ方向を目指していたとしても、立ち止まる役割を担うのも議会の大切な仕事だと、私は考えています。

これで終わりではありません

今回の議案に反対したのは、前に進めるために、
一度立ち止まる必要があると判断したからです。

組織改編が実際にどのように運用され、
職員の負担や業務にどのような影響が出るのか。
今後もしっかり確認していきます。

そして、必要があれば改善を求めていく。
それもまた、議会の役割だと考えています。

議会は、行政を止めるための機関ではありません。
より良い形で前に進めるために問い直す場です。

私の判断が正解でなかったとしても、
なぜその結論に至ったのかを言葉にすることで、
みなさんと一緒に考える材料にできればと思っています。

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