先日家族で旅行に行き、その先で「自然保育」を体験してきました。
自然保育とはその名のとおり、保育のフィールドを自然の中に置き、そこで子どもたちが活動する保育全般を指します。これ、という決まった形はありませんが、自治体として認証システムがある場合もあり、子どもたちが自然の中で遊ぶ機会が極めて少なくなっているいま、注目が高まっています。「森のようちえん」や「野外保育」などと呼ばれることもあります。
私がおじゃまさせていただいたのは、広島県尾道市の向島という離島で活動するみらいのこども舎さんです。
みらいのこども舎さんは、「地域の自然や人との関わりの中で生きることを楽しむ」「こどもの時間を十分に味わう」「親子が共に学び合える場づくり」を理念に、島の自然や地域とのつながりを活かしたプログラムを通し、こども達の個性を尊重しながら、心身ともに健やかに過ごせる環境づくりを目指し活動している団体です。山や海、森で活動したり、畑で作業をしたり、料理を作る日があり、子どもだけで参加する「預かり」と親子での参加を選ぶことができます。
この日は、向島洋らんセンターでの活動でした。

洋ランの栽培が行われている建物の隣には、広場があり、その周りには木々が生えていたり、ビオトープがあったりして、遊具は一切ありません。
この場所で子どもたちは思い思いに遊び始めます。お友だちや保育者を誘ってこおりおにを始める子、ビオトープへ行って生き物を探す子、ベンチの側のテーブルに置いてある紙におえかきする子もいます。家の3歳4歳の子どもたちも、仲間に入れてもらって、木登りをしたり、虫を見つけたり、時に母親の目の届かないところへ行って探検したりしていました。
途中、下の子が転んで、ケガをしてしまいました。すると「よもぎを探してこよう!」と言って、何人かの子どもたちと保育者さんがよもぎをとってきました。そして、揉んだよもぎの葉を傷口にあててテープで貼ってくれました。「ここではケガしたらいつもこうしてるよ」「虫にさされたら、これを塗るんだよ」と、毎年春先に作るよもぎオイルを救急箱から取り出して見せてくれました。5歳の女の子の手際のいいこと。

しばらくすると、朝の会が始まりました。点呼をとるだけでなく、「今日のニュース」と言って、みんなに知って欲しいことや今日やりたいことをシェアします。「〇〇ちゃんと魔女ごっこがしたい」「昨日はママの誕生日だった」「2歳の弟が包丁を使えるようになった」などなど。小さな声で喋る子がいたり、なかなか話が終わらない子がいたり、何度も言葉がつまってしまう子がいたりするけれど、途中で止められたりすることはありません。そして、ほとんどの子がなんとなくその場にいられている。大人でもちょっと長いかな、と感じたけれど「ちゃんと聞こうね」「終わるまで座っていようね」のようなルール説明は必要ないようでした。
その後、絵本の読み聞かせがあったり、みんなでお弁当を食べたり、また遊んだりしている間に、親子参加の時間は終わりました。
今回の体験で驚いたのは、とにかく時間が進むのが早かったこと。普段、子どもたちを公園に連れて行くと、こっちの遊具で遊んで、あっちの遊具で遊んで、またこっちに戻って、今度は母ちゃん一緒に遊ぼうと言われ、時計を見たら「まだこれしか時間経ってないの!?」の連続だったのに、遊具もおもちゃも何もない空間で、気づいたら終わりの時間になっていたのです。ひょっとして子どもたち、おもちゃや遊具がない方がたくさん遊べるのでは?
みらいのこども舎さんでは、基本的に屋外で保育をしていて、雨でもみんな嫌がらずに雨ならではの遊び方を見つけ出して遊んでいると言います。子どもたち・人間の本来持っている能力を引き出して、どんな環境でも生きていける力を伸ばすのが自然保育なのかな、と私なりに理解しました。
みらいのこども舎さんそのものについても触れておきます。「向島は自然にあふれているのに、子どもたちが自然に触れる機会があまりない!」という課題を解決するために、実際に子どもを育てている人たち、子育てに関わりたい人たちの熱意から生まれたのがみらいのこども舎さんです。これまで、公的な資金が投入されたことはなく、利用者の利用料を頼りに運営してきています。保育者は保育士資格を持っているわけではなく、特定の施設を持たないので「保育園」ではありません。
この日保育をしていた方に話を伺うと、食べ物には旬があることや、自然の中にあるものを使って人の営みをすることなど、昔の人なら当たり前に知っていたようなことがわかりづらい世の中になっているから、それを次の世代に繋いでいくことがしたい、とおっしゃっていました。みらいのこども舎に通う子どもたちは、自然の中で遊ぶことで季節の移ろいを感じ、自然の中で見つける遊びの道具や、畑での活動や料理の時間から大地の恵を実感し、そこから少し拝借することや工夫する人の生活を実感を持って学んでいくんだと思います。
尾道市向島と同じく、山があり海があり自然が豊かな鳥羽市。でも私たち保護者はその環境を子育てに活かせているでしょうか。保育所や学校はどうでしょうか。
行政が自然保育に取り組むこともできるでしょう。例えば幼稚園を自然保育の園とし、保育所との違いをより明確にする。小規模保育所のひとつをモデルとして始めて、だんだん他の保育所にも取り入れて、市の保育所全てを自然保育に転換するという方法もあります。また一方で、みらいのこども舎さんのように、子育てする人たちが自分たちで自分たちの自然保育のあり方を探りながら作って行くこともできるでしょう。いずれにせよ、一朝一夕でできることではありません。
私が個人としてできることは?と考えてみると、母親として、自分の子どもたちにはできるだけ山や海で過ごす時間を作ってあげようと、改めて思いました。また、各家庭では難しいことも、友だちと一緒ならなんかやれてしまうような気もします。だから、周りの人に声をかけて、プチ自然保育の日を休日に企画してみたいと思います。子どもが遊んでもかまわない山や広場をお持ちの方はぜひ、お声かけください。