ワクワクする保育所

木目の机の上に、ひまわりの成長過程を記した掲示物やドングリの見分け図鑑が置かれている。小瓶に入った種や、本物の椿の花、バケツに入った落ち葉など、自然物に触れられるコーナー。

大紀町のオープン型保育研修会に参加してきました。

保育士の義母に「ぜひ参加してみて」と言われるがままに行ってみたのですが、もう着いて数分で「来てよかった!!」とただただ義母に感謝。

今年度の4月から「オープン型保育」を進めている大紀町の保育園の見学と事例発表を含む研修で、参加者はほとんどが大紀町や周辺市町の保育士さんです。このオープン型保育をするにあたって、コーディネーターとして関わっている絵本作家で遊び作家の浦中こういちさんから、まずはお話を聞けました。

浦中さんは保育園の環境を作る時に大切にしていることが3つあるんだそうです。

  1. オープンであること(子どもたちが外の人と関われる)
  2. 家庭的であること(子どもにとって安心できる空間)
  3. 保育者により沿ったやり方(現場の声を大事に)

これを実現し「あそび込める」空間づくりに取り組んでいるのが、今回見学させてもらった大宮保育園をはじめとした大紀町の4つの保育園です。

薄紫色の布を被せた台の上に、切り株の土台に乗った粘土の作品が3つ並んでいる。粘土にはドングリが埋め込まれ、生き物のような形をしている。

まず、園の中に入るといわゆる“普通の保育園”とは見た目が違います。壁に先生が作った季節の飾りがありません。保育園といえば、色画用紙を使って動物などのキャラクターで季節のイベントを表現した飾りがあると思います。それらを先生たちが持ち帰り仕事にしているなんていうのもよく聞く話です。でも、大宮保育園にはこれがありませんでした。

園舎の壁面。麻紐に木の実で作ったクリスマスツリーのようなオーナメントが吊るされ、その下には子どもたちが自由に描いた絵が飾られている。

その代わりに飾られているのは、子どもたちが作った作品です。木の枝やどんぐり、毛糸や布のきれを使ったものや、紙に描いた絵、大きな布にみんなで絵の具遊びをしたものなど。壁や床の木材が印象的な園舎にとてもマッチしています。廊下には椅子が並べられており、その日に作った作品を、折り紙でも、ボンドで紙に色々な素材を貼り付けたものでも、ブロックでも、飾っておけるようになっているみたいでした。自分が作ったものが、自分が作ったと分かる状態で一定時間展示されるというのは、子どもにとっても嬉しいものだろうな、と感じます。

木造の廊下の一角。小さな木の椅子を並べた棚の上に、子どもたちが作った釣り竿や空き箱を利用した制作物が並んでいる。

他には、畑で収穫されたものや、工作で使えるどんぐりやひまわりの種、地域の方からもらったものと思われるみかんとその葉っぱなどが、子どもたちの目線の高さにディスプレイされています。これらは、必ずしも保育士さんが主導してやっているものではありません。子どもたちの気づきやアイディアから生まれたものばかりなんです。

隣接する小学校や中学校とも交流があり、調べ物をするときに図書室を使わせてもらったり、体育の先生にリトミックを教わったり、避難訓練を合同で行ったりしているそうです。この日も凧揚げをするために小学校の校庭を借りていて、休み時間の児童たちと一緒に遊んでいました。

また、子どもたちの主体性を大切にしていることがよく分かるエピソードがあります。(複数ありましたが、紹介はひとつだけ)4歳児クラスで「お花を咲かせたい」という子がいたので、その季節に種を蒔くのにちょうどいい植物を図鑑で調べて、ひまわりに決定。近所のコメリへみんなでお買い物に行き、4種類の種を買いました。翌日、コメリの店員さんに来てもらって一緒に種を蒔き、大切に育てました。子どもが「花が咲いとったよ」と気づいたタイミングで、花を収穫して観察すると、色紙を使って「ひまわりを作りたい」という子が出てきて、みんなが色紙でもひまわりを作りました。本物を見ながら「ここはもっとこうしよう」という工夫も見られたそうです。さらに、種がとれることがわかると、乾かしてから種をとるというのにしばらく子供達の関心が向きました。とれた種を廊下に展示していましたが、いつしか関心は失われました。しばらく経ってから「種きもちいい」と言いながら触る子がいたので「お部屋に入れてみる?」と聞いて、部屋に入れると、これらの種を並べたり、どんぐりを足したりして、作品作りが始まりました。印象的だったのは、この事例を紹介した先生が、しばらく関心が失われた期間があって、興味の流れが途切れてしまったので、(関心が続くような)環境改善と子どものつぶやきに耳を傾けることが課題、とおっしゃっていたことです。ワクワクする保育をしている大宮保育園ですが、まだまだよくなるつもりのようです。

木目の机の上に、ひまわりの成長過程を記した掲示物やドングリの見分け図鑑が置かれている。小瓶に入った種や、本物の椿の花、バケツに入った落ち葉など、自然物に触れられるコーナー。

また食事の時間をきっちり決めていないというのは驚きでした。生活リズムは家庭によって違います。昼食の時間は「だいたいこの時間からこの時間まで」というのにおさまれば、いつ食べてもいいようにしてあるというのです。3歳児〜5歳児はみんな同じお部屋で食べることになっているけれど、席は決まっていません。先生たちは、声を掛け合って教室に残る子を見たり、給食を食べる子と一緒に移動したりしているそうです。子どもたちはこの給食を食べるお部屋を「レストランみたいだね」と言って「だいすきレストラン」という名前をつけました。自分たちで名前を決めることで、さらに愛着が深まったんじゃないでしょうか。黒板に書かれただいすきれすとらんのロゴもとってもすてきです。

「だいすきれすとらん」と書かれた手描きの黒板看板。背後の紐には、トウモロコシや活動の様子を伝える写真がディスプレイされている。

あそび込める空間づくりのために、リラックスできる空間も作られていました。棚で部屋を仕切って、上靴を脱いで活動できるスペースを作ったり、押し入れの下段が秘密基地のようになっていて、そこにクッションが置いてあったりします。これを見て、自分の子の通う保育所にもこんな場所が欲しいな、と感じました。4歳の上の子はしばしば行き渋りがあります。保育所に行けばニコニコ過ごしているし、先生も大好きだし、仲のいいお友だちもいるし、決して保育所が嫌いなわけではないのですが、疲れてしまうみたいなんです。そりゃそうですよね。自分だけじゃなくてみんなのことを見なきゃならない先生、急に泣いたり怒ったりしてくる友だちの中で、いい子でいようという意識もあるだろうし、気を張っていると思います。それを考えると浦中さんの言っていた「家庭的であること」の大切さがよく分かるんです。家にいるときみたいにだらりとくつろげる、そんな時間や空間があったらもう少し疲れずにいられるのかな、と。

押し入れの下段を活用した「秘密基地」のような空間。床にはマットが敷かれ、丸いクッションが2つ置かれている。奥の壁には色鮮やかな絵が飾られ、手前には手作りの楽器(木琴など)が並ぶ。

また「明日保育園でやりたいことがあるんさ」と家族に話した子の話も聞きました。実際、今朝も登園してきた子たちが園庭に出て行って、何しているのかと見ていたら、前日に水を入れて置いておいたバケツにはった氷で遊んでいたんです。厚くはった氷が取り外せないので「お湯を使ったらいいんじゃない?」などと工夫をして遊んでいました。やりたいことがあるから早く行きたい保育園って素敵ですよね。

先生たちによる事例報告や、午前中いっぱい使った園内見学を通して感じたことなどをふまえ、午後の研修のディスカッションでは「あそびが広がる保育とは」というテーマでグループワークをしました。同じグループにいた大紀町の先生たちの手がずーっと動き続けていて、溢れてくるアイディアや普段感じている課題感などを感じました。

ワークショップの風景。大きな模造紙に「保育者や園にできること」というテーマが書かれ、「やりたいことを一緒に考える」「きっかけを逃さない」など、参加者のアイディアが書かれた付箋がたくさん貼られている。

大紀町の本格的なオープン型保育は、今年度始まったものだそうです。1年経たずにすでに、これだけ魅力的な保育園ができているということに私は大きな希望を感じます。じゃあ今年の4月に鳥羽でも始めたら、来年の今頃には自分の子どもたちがこんな環境で過ごせるってこと?と思うんです。今回見た大宮保育園は園児が24人と非常に規模の小さい保育園で、他の3つの園も同じような状況です。「小規模だからできるんだよ」という声が聞こえてきそうですが、本当にそうでしょうか?規模の大きな園だとこれができないのはなぜ?と考えていけば、結局は人的資源の足りなさだと思います。それは、募集をかけても採用になかなか繋がらない・離職が多いということと、そもそもの配置基準どおりでは保育士の負担が大きすぎる、という2つの課題があります。私がほぼ確信しているのは、大紀町のような保育ができるのであれば鳥羽の保育所で働きたい・働き続けたいという保育士さんは必ずいるということです。工夫は必要ですし、子どもたちの気づきに常に注意をはらい続け、見通しを立てづらいという負担はあるでしょうが、いま現在保育士さんたちが感じている負担のような不毛感や消耗感はないでしょう。また、それ以上に毎日のように子どもたちの気づきや成長を目の当たりにできる感動は何物にも変え難いはずです。学校で多くのことを学んできた保育士さんたちが「ここでなら自分の理想とする保育ができる」と思える保育所にすることは、慢性的な人員不足の解決につながるはずです。もちろん、他自治体や民間と比べて低いと言われている給料を改善することは大前提としてですが。そして配置基準、これは独自のルールを作るしかないと思います。「なんとなく1人くらいは余裕がある」レベルでは厳しいでしょう。

鳥羽の保育所もこんなワクワクする保育所にしたい!!そういう思いを抱くことになる研修でした。もちろん、こういった魅力的な保育環境を整えると同時に、小中学校も魅力的な学びの場にしていかなければなりません。子どもたちの過ごす環境は一貫して質が高いことで意義が見出せると思います。

園庭を見渡すテラスの軒下。蔓(つる)を丸めて細長く裂いた布切れをつけた帽子やオーナメンのようなものが逆光の中で風に揺れている。

ところで私はこれまでこのブログをちっとも活用できていなかったのですが、今年は活動の内容を積極的に発信していきたいです。現状私の活動や考え、議会での動きなどが全てわかるプラットフォームが無いので、このサイトがその役割を果たせるようになれればいいと思っています。それでは2026年もよろしくお願いします。

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